境界問題相談センターロゴ 境界問題相談センターロゴ02
境界問題相談センター トップページへ
境界問題相談センターおおさかについて
はじめに
センターの人員構成
案内図
よくある質問
ご相談の手続きについて
手続きの流れ
手続きの費用
どないしょ?
「境界問題」知識いろいろ
事例集

豆知識コラム

その他
サイトマップ
お問い合わせ
リンク集



大阪法務局
「筆界についてお困りの方」無料相談



相談申込書ダウンロード
PDFファイル(381KB)

境界問題相談センター
おおさか
〒540-0023
大阪市中央区北新町3番5号
大阪土地家屋調査士会館内
TEL/(06)6942-8750
FAX/(06)6942-8751

 

豆知識コラム
  事例集 豆知識コラム ADR認証について    
■ 第5回目コラム


改正民法(令和5年4月1日施行)について

 令和5年4月1日施行の改正民法では、境界問題センター大阪において取り扱う境界問題の紛争において、境界問題に付随して問題となることも多い相隣関係の規定も改正されています。同改正では、共有関係、相続登記についても大きな改正がなされていますが、このコラムでは、相隣関係に関する改正を中心に紹介します。

 相隣関係については、以下の3点の改正がなされました。

 @ <変更>隣地使用権(新民法209条)

 A <新設>ライフラインの設置・使用権(新民法213条の2・3)

 B <変更>越境した竹木の切除(新民法233条)

 これに加えて、改正民法では、以下CDの制度が新設されています。特に、Dの管理不全土地・建物管理制度では、管理不全になっている土地や建物(例えば、破損が生じている擁壁などが放置されていて隣地に倒壊するおそれがある場合や ゴミが不法投棄された土地や建物を所有者が放置しており、臭気や害虫発生による健康被害を生じているような場合)について、裁判所が選任する管理人により管理行為等を行うことができるようになり、管理不全となっている隣地問題の解決策となることが期待されます。

 C <新設>所有者不明土地・建物管理制度(新民法264条の2〜8)

 D <新設>管理不全土地・建物管理制度 (新民法264条の9〜14)

 では、これらの改正について、詳しく説明していきます。 

1 隣地の使用に関する規定の改正

 @ 改正前の民法209条1項は、「障壁又は建物」を「築造し又は修繕」する場合に 「使用を請求」できると定めていました。新民法209条は、以下のとおりA権利の性質を変更するとともに、B使用目的の拡充・C使用の際のルールの明確化をしています。

 A 権利の性質について

  改正により「使用を請求」することができる権利から「使用」する権利として明確化されました。ただし、使用する権利として明確化されたからといって、隣地の所有者が使用・立入を拒否している場合にまで、裁判手続を経ずに使用が可能なわけではなく隣地の所有者が使用・立入を拒否している場合には、裁判手続を経る必要はあると考えられています。

 B 使用目的の拡充

  改正により、「障壁又は建物」だけでなく工作物一般についての「築造」「修繕」に加えて「収去」の目的でも隣地の使用が可能になりました。 また、「境界標の調査・境界に関する測量」に加え、以下の「3」で説明する越境した枝の切取りの目的でも隣地の使用・立入が可能になりました。

 (ここでの「境界」とは、いわゆる「所有権界」をいうものと理解されます(以下※参照)が、土地家屋調査士が土地分筆登記や地積更正登記の依頼を受け、筆界を明らかにするための調査・測量の過程で「筆界」を探索するにおいては、当然に「所有権界」の位置の調査・測量も必須となりますので、改正民法209条を根拠とする隣地使用(立入)が可能と考えられます(鈴木泰介土地家屋調査士(土地家屋調査士2022.6月号・No785号・13頁)。)

※ 「所有権界」とよく似た概念として「筆界」がありますが、両者は異なる概念として理解されており、民法上の「境界」という文言は、「所有権界」を指すものと考えられています。「筆界」とは、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり、所有者同士の合意などによって変更することはできないものをいうのに対して、「所有権界」とは、所有権の範囲を画する線で、所有者同士の合意などにより変更することが可能です。「所有権界」と「筆界」は、原則として一致しますが、所有者同士の合意や取得時効などにより、一致しない状態となることもあります。

  C 使用の際のルールの明確化

  使用の際のルールが明確化され、以下@、Aによる必要があります。

  @ 事前通知(原則)

   原則として、事前に、使用の目的・日時・場所・方法を隣地所有者及び使用者に対して、通知することが必要であり、それが困難なとき(急迫を要する事情がある場合や隣地所有者又はその所在が不明の状態が続いている場合)に限り、事後の通知によることも可能です。

  A 日時・場所・方法の限定

日時・場所・方法は、隣地所有者及び隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。

  D 改正による影響

   改正前においても、隣地を使用したり立入する場合には、通知の上、承諾をえて行うというのが通常であり、隣地使用・立入時のルールが明確化されたぐらいで、大きな変更があるわけではありません。ただし、隣地が、所有者不明土地である場合の隣地の使用(立入)は、本改正により、相当容易になったと考えられます。

 2 ライフラインの設置・使用権

 @ 他人の土地や設備(導管等)を使用しなければ各種のライフライン(電気・水道・ガス等)を引き込むことができない土地の所有者(いわゆる「導管袋地」)に関して、ライフラインを引き込むために他人の土地・設備を利用する権利については、これまでも下水道法や判例の解釈により認められてきましたが、新民法213条の2・3では、これらの権利が法律上明確に規定され、必要な範囲内で、他の土地に設備を設置したり、他人の所有する設備を使用する権利があることが明確化されました。なお、上記「1」の隣地使用の場合と同じく、対象土地の所有者等が使用・設置を拒否している場合にまで、裁判手続を経ずに使用が可能なわけではなく、裁判手続を経る必要はあると考えられています。

  A 使用の際のルール

   使用の際のルールとして、以下@、Aによる必要があります。

  @ 事前通知

   他の土地に設備を設置し又は他人の設備を使用する土地の所有者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土 地・設備の所有者に通知しなければなりません。(上記「1」の隣地使用の場合と異なり、例外なく、通知が必要となります。)

  A 場所・方法の限定

   設備の設置・使用の場所・方法は、他の土地及び他人の設備のために損害が最も少ないものに限定されます。

  B 償金・費用負担

   設備設置工事時に発生する損害に加えて、継続利用による損害・維持管理費用について償金・費用負担に関する定めがなされています。

 3 越境した竹木の枝の切除

 @ 改正前民法においては、竹木の枝・根が越境した場合には、枝と根で異なった扱いが定められており、根は越境された側において自ら切り取ることができたものの、枝については、越境された側において切除することはできず、竹木の所有者側に切除させる必要があり、枝の切除に応じてくれない場合には、枝が越境する度に、裁判手続きが必要でした。枝と根の価値のちがいなどから、両者のちがいが説明されてきましたが、越境した竹木の枝による被害が特に地方において深刻化していました。

 そこで、改正による新民法233条は、竹木の所有者側に切除させるという原則を維持しつつ、一定の場合に、隣地の竹木の枝を自ら切り取ることができることとなりました。また、竹木が共有であっても、他の共有者の同意なく竹木共有者の1人が切除を行うことができる旨も明記されました。

  A 越境された側が、越境した竹木の枝を自分で切除できる場合

   具体的には、次の@〜Bの場合です。

  @ 竹木所有者に枝の切除を請求したのに、相当期間内に切除しないとき

  A 竹木所有者が不明又は所在不明の場合

  B 急迫の事情があるとき

4 所有者不明土地・建物管理制度

 @ 改正前民法においては、不動産の所有者が所在不明となっている場合などに利用できる財産管理制度(不在者財産管理人(民法25条)、相続財産管理人(民法952条)、清算人(会社法478条)は、対象者の財産全般を管理する「人単位」の仕組みとなっていたため、管理人の財産管理業務の負担も大きく、申立に要する費用(予納金)なども大きいものでした。そこで、改正法(新民法264条の2〜8)は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地・建物について、管理の必要性がある場合には、特定の土地・建物のみ特化した管理人を選任することができるようになりました。

  A 管理人の権限など

選任された管理人は、不動産の保存・利用・改良行為を行うほか、裁判所の許可を得て、対象財産の処分(売却、建物の取壊しなど)をすることも可能(新民法264の3U、264の8X)

 5 管理不全土地・建物管理制度

 @ 改正前民法においては、危険な管理不全土地・建物については、物権的請求権(妨害排除請求・妨害予防請求)・不法行為に基づく損害賠償請求権等の権利に基づき、訴えを提起して判決を得て強制執行をすることによって対応するしかなく、管理不全状態にある不動産の所有者に代わって管理を行う者を選任する仕組みは存在しませんでした。そこで、改正法(新民法264の9〜14)では、所有者による土地・建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要がある場合には、管理不全土地・建物について管理人を選任することができるようになりました。 

A 管理人の権限など

 @ 管理人は、保存・利用・改良行為を行うほか、裁判所の許可を得ることにより、これを超える行為をすることも可能。ただし、土地・建物の処分(売却、建物の取壊し等)をするには、その所有者の同意も必要となる。

 A 管理命令の効力は、管理不全土地(建物)のほか、土地(建物)にある所有者の動産にも及ぶが、その他の財産には及ばない。  

以上、改正の内容を説明しました。改正により、これまで解決が難しかった隣地の問題等が解決できるようになった可能性があります。

目次に戻る

ページ上部へ
  Copyright(c) 2005-2006 kyokaimondai soudan center OSAKA All Right Reserved.
大阪土地家屋調査士会 大阪弁護士会